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お前の旅の目的は(4)
「へぇ、そういう区別なんだ」 「……お前は、どういう定義だと思っていた?」 「うーん、プロかアマか、かな? それをメインで仕事にしている人が傭われ」 「じゃあ旅人の本業は?」 「旅だろう」 「そういうことだ。傭兵(おれたち)は依頼人の旅路に付き添い、時に道を教え、時に障碍を...
宮間 怜一
6月3日
お前の旅の目的は(3)
「『俺の旅』じゃなくて、『芽留の旅』なんですよね」 「芽留の?」 「ええ。俺と芽留はいとこ同士なんですけど、芽留の両親がちょっと気難しい人たちで。外で遊ばせない、旅行やお出かけもしない、勉強や習い事は家庭教師、みたいな」 「それは……」...
宮間 怜一
6月3日
お前の旅の目的は(2)
「アタシ? アタシはねぇ、いくつかあるけど、やっぱり一番の要因は飛鳥かしら」 「そうか」 「今までも、友達や親しい人がいなかったわけではないんだけどね。こんなに気の合う人って、なんだか久々で」 「……ずっと前から、友人だったみたいな感覚?」 「そうそう!...
宮間 怜一
6月3日
お前の旅の目的は(1)
「お前、なんでついてきたんだ」 「なんでって、そりゃ金のためよ」 「……怪物駆除か」 「おう。──オレはバカだし、ナリもガキっぽいから、町の大人にゃナメられててよ。町じゃあ働いても、ろくに稼ぎを貰えねェ。そんなオレに、バカでもガキでも金を稼げる、実力主義の世界を教えてくれた...
宮間 怜一
6月3日
かたちの違う 誠実な人
『好きだよ』と、そいつは軽々しく口にする。 曲がりなりにも異性で、俺には散々『お前が嫌いだ』と言われていて、周りには自分を好いている人間が何人もいるにも関わらず。 「なんで、よりによって俺に言う」 「というと?」 「誰とは言わないが、もっと言うべき相手ってのがいるべや」...
宮間 怜一
4月20日
回想 第n-1試行
ミスカはあたしが創った登場人物の中では一番年上で、物静かで、いつもあたしや他の仲間の話を聞くばかりで自分の話は滅多にしない人だった。今までの試行(ループ)の中でももめたりぶつかり合ったことがほとんどなく、言ってしまえば一番友達として浅く、よく知らない、そんな人だった。...
宮間 怜一
2024年12月1日
自分を殺そうとした君に
あたしの旅の目的は、『自分』を倒すこと。 『今まで散々試したじゃん』 『首を絞めようが、凶器を振るおうが、君は僕を殺せない』 『今更そんな何の変哲もないナイフで、僕をどうする気?』 『僕のことが、殺したいほど憎いのは知ってるよ。でもさあ、どうやって倒すの?...
宮間 怜一
2024年5月8日
うちの子短歌もどき
Blueskyに掲載したもの まとめ 不定期更新予定 ■飛鳥 ループする世界でまだ会ったばかりのはずのあたしと寝られる貴方 (→琳) 恋バナの好きな親友(あなた)が可愛くて 恋なんてしている暇はない! (→ミカ) いま倒した魔物を食えるか訊くな 今夜悪夢に出たらどうする (...
宮間 怜一
2024年4月26日
はじめのはなし
少女が望んだのは『主人公』だった。 どこをとっても他人より優っておらずどこをとっても他人ほど劣っていない平凡な自分が、 主役になれる世界を望んだ。 かくして『世界』は少女の願いを聞き、舞台を用意した。 夢の中、少女には三人の友人がいた。三人が羨むような、素敵な恋人も。...
宮間 怜一
2023年3月5日
無欲な男は寂しがり
「おや、ナイフだ」 武器の手入れをしていると新しい雇い主が覗いてきた。 「というよりは短剣かな?」 「元は双剣でな、子供の頃に買ってもらって、もう一本は年子の兄が持っている」 「へえ、いいね。でも普段使うのは槍だろう? 使い分けるの?」...
宮間 怜一
2023年2月23日
彼とリラ
失礼だけど、最初彼が屋敷に来た頃、彼が少し怖かった。 女の子のようなきれいな顔立ちをしていたけれど、眼帯をしていて、顔も手も皮膚がボロボロ、それを隠すように暑い季節も全身着込んでいた。 世界には魔法障害というものがあるらしい。...
宮間 怜一
2023年2月22日
最後の旅のはじめの夜
夢の中でも夜は来る。 船の軋む音。波の音。まだ二人だけの客室は静かだ。 これから、長い旅になる。あと五人もの仲間を迎えて、色々な街を巡って、修学旅行みたいな毎日を過ごすんだ。 そうして旅路の果てに、憎き悪役を倒したらもう終わり。あたしは現実世界に戻って、何もなかったみたいに...
宮間 怜一
2023年2月18日
楓谷眞透という男
遠い昔、自分も弟もまだほんの子供だった頃、弟はよく悪い夢を見た。 涙目で朝を迎えては、年の離れた末の弟に泣きべそを見られないように、 がむしゃらに目を擦っていた。 友達を殺す夢なのだと弟は言う。 毎度同じ夢を見て、毎度同じ誰かを同じ人数同じ手順で殺し、...
宮間 怜一
2021年3月3日
夢見月の恋人
「……琳」 「うん?」 「まだ起きてる?」 「起きてるよ」 「……そっち行ってもいい?」 「そっち?」 琳は寝返りをうってこちらを向き、自分の布団を持ち上げた。 「ここ?」 許されるままに琳の懐にすっぽりと収まる形になる。布団の中は琳の体温が移っていて暖かい。琳は背も高...
宮間 怜一
2020年10月21日
オーダーメイド
「髪は長いのと短いのどっちが好き?」 自分一人しかいないはずのリビングで、少女の声がした。 「どっちかといえばショートかな」 「じゃあ長くするね」 声の発生源は僕の背後、少し上の方。たぶんソファの背もたれに腰かけているのだろう。 僕が黙っていると、声は話を続けた。...
宮間 怜一
2018年8月22日
写真とケータイ
露店で売っていた菓子を口にしながら街を歩く。談笑する六人の後ろ姿。 たぶん今日の夕方くらいの写真だ。 シャワーを浴びて部屋に戻ると、そんな画像を映した小さな機械を飛鳥が眺めていた。 「それ、写真機だったの? 電話だと思ってた」...
宮間 怜一
2017年6月1日
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