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お前の旅の目的は(2)

  • 宮間 怜一
  • 6月3日
  • 読了時間: 2分

「アタシ? アタシはねぇ、いくつかあるけど、やっぱり一番の要因は飛鳥かしら」

「そうか」

「今までも、友達や親しい人がいなかったわけではないんだけどね。こんなに気の合う人って、なんだか久々で」

「……ずっと前から、友人だったみたいな感覚?」

「そうそう! ミッスも心当たりある?」

「なんとなく」

「不思議な子よね。距離感がちょうどいいのかしら。そんなだったから、飛鳥が旅立つって聞いたとき、なんだかとても名残惜しくって。もっと一緒にいたい、この子と言葉を交わしてみたいって思って、ついてきちゃったの。押しかけたみたいになっちゃったかしらね」

「いや、押しかけたって言うならどっちかというと」

「……グレイ?」

「グレイ」

「そんなことだと思ったわ」

「まあ、飛鳥やリンはお前を歓迎している。加入は何も問題ない」

「アナタは?」

「俺は、よほどのことがない限り口出ししない」

「あ、もしかしてアナタ、傭われなの?護衛役?」

「それと案内役」

「そうだったのね。リンは? てっきり旅慣れしてると思ってたわ」

「陸路の旅には疎いらしい」

「そういうことね。あっ、そうそう、旅の話が聞きたいなら、アタシもうひとつ大事な目的があるんだけど」

「それは?」

「運命の人を捜すのよ」

「……??」

「アタシ恋が知りたいの! 今は好きな人ってまだいないけど、いろんな街を旅して、たくさんの出逢いを重ねたら、きっと運命の王子様に巡り逢えるはずだわ!」

「……そんな理由で……!?」

「『そんな』とは何よ! 花嫁探し・婿探しなんて、むしろ古典の時代からよくある旅の理由じゃない!?」

「す、すまん、失礼だった」

「ゴメンナサイできて偉いわね。ねぇ、ミッスは好きな人いる? 恋したことある?」

「俺がそういうのに縁があると思うか?」

「あら、誰だってあるんじゃないの? 普遍の素敵なことなんだから、隠したり否定したりしなくていいのよ。……ねぇミッス、今はまだいなくても、いつかアタシに教えて頂戴ね」



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