お前の旅の目的は(1)
- 宮間 怜一
- 6月3日
- 読了時間: 2分
「お前、なんでついてきたんだ」
「なんでって、そりゃ金のためよ」
「……怪物駆除か」
「おう。──オレはバカだし、ナリもガキっぽいから、町の大人にゃナメられててよ。町じゃあ働いても、ろくに稼ぎを貰えねェ。そんなオレに、バカでもガキでも金を稼げる、実力主義の世界を教えてくれたのはお前だろ」
「……それで?」
「バカでも、っつったって、ド素人がひとりでやるには取っかかりがねェのよ。戦い方に、クエストの貰い方、道具は何が要るのかとか」
「あー、案内所はわかるか? 青い看板の。あそこに行けば初心者向けの案件を紹介してもらえるぞ」
「わかるわかる。でも初心者向けっつーことは、報酬も大したことねーんだろ?」
「まぁ、緊急性が低くて、技術のない人間がひとりで請けられるような案件となるとな。それだったら、頭数の要る案件を中級者に交じってこなしていく方が、得られるものは多いだろう」
「だろ? ほら合ってんじゃねーか」
「……『お前が言い出したんだから、お前が面倒見ろ』と?」
「『目で見て盗むくらいはさせろ』と」
「……長期的なこと考えるなら、他の奴探した方がいいぞ」
「わざわざ別のセンセイ探す時間が勿体ねえよ。……オレひとりだったらよ、多少ひもじいとか、多少服がボロっちいとかは気にしないこともできっけど、義弟義妹(おとうと・いもうと)にはそんな思いさせたくねェもんな。うちの運営をやってたアクア兄から、当面の生活費は預かったけど、あれに頼りきりになんのはイヤだ」
「……兄ちゃんだもんな」
「おうよ。そんで、デキる兄ちゃんは勉強代を節約すんのも忘れないってわけ」
「生意気言ってると金とるぞ」
「はははっ」
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