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お前の旅の目的は(4)
「へぇ、そういう区別なんだ」 「……お前は、どういう定義だと思っていた?」 「うーん、プロかアマか、かな? それをメインで仕事にしている人が傭われ」 「じゃあ旅人の本業は?」 「旅だろう」 「そういうことだ。傭兵(おれたち)は依頼人の旅路に付き添い、時に道を教え、時に障碍を取り除く。『旅の目的』があるのは依頼をしてきた旅人で、俺たち自身に行き先や目的はない」 「じゃあその前は? 傭われになる前、貴方は何だった?」 「……家を離れてから俺は、こっちの定義(いみ)ではずっと傭兵だった。それより前は、ただの子供だ」 「どうして家を離れたの」 「……くだらない理由だよ」 「ふーん」 「お前の旅の目的は?」 「私も莫迦みたいな理由だよ。一緒だね」 「……」 「表向きの話をするなら、当面は飛鳥の旅のサポートが私の行動の軸になるかな」 「飛鳥とは長いのか?」 「まだそんなに。でも、境遇が近いんだ」 「境遇?」 「『異世界』って知ってる?」 「いや」 「船でも飛空便でも辿りつけない、遠い土地だ。あの子はそこからひとり迷い込んだ」 「……」 「私も大体似たようなも
2025年6月3日


お前の旅の目的は(3)
「『俺の旅』じゃなくて、『芽留の旅』なんですよね」 「芽留の?」 「ええ。俺と芽留はいとこ同士なんですけど、芽留の両親がちょっと気難しい人たちで。外で遊ばせない、旅行やお出かけもしない、勉強や習い事は家庭教師、みたいな」 「それは……」 「厳しいっていうよりは、過保護なんですよ。芽留って、お世辞にも丈夫な方ではないし。怪我したり、誰かに嫌な目に遭わされたり、なんていうのがあったらコトじゃないですか。一人娘だからなおのことです。 逆に俺なんて超奔放に育ったクソガキでしたからね! 庭の木に登って・芽留が真似しようとして・怒られ、虫を大量に捕まえて持っていき・叔母さんを卒倒させ・怒られ……」 「……嫌がらせ?」 「いや、蝶とかトンボだったんですよ! きれいな奴! 実際、芽留本人は虫好きだったんで喜んでました」 「まぁ男児のプレゼントはそんなもんか……なんの話してたんだっけ」 「あっそうだ、芽留の話ですよ。虫もそうですけど野の花とか、旅行の写真とか、『外』のものを持っていくと芽留は喜びました。自分ではなかなか体験できないから。 それで、あるとき言い出
2025年6月3日


お前の旅の目的は(2)
「アタシ? アタシはねぇ、いくつかあるけど、やっぱり一番の要因は飛鳥かしら」 「そうか」 「今までも、友達や親しい人がいなかったわけではないんだけどね。こんなに気の合う人って、なんだか久々で」 「……ずっと前から、友人だったみたいな感覚?」 「そうそう! ミッスも心当たりある?」 「なんとなく」 「不思議な子よね。距離感がちょうどいいのかしら。そんなだったから、飛鳥が旅立つって聞いたとき、なんだかとても名残惜しくって。もっと一緒にいたい、この子と言葉を交わしてみたいって思って、ついてきちゃったの。押しかけたみたいになっちゃったかしらね」 「いや、押しかけたって言うならどっちかというと」 「……グレイ?」 「グレイ」 「そんなことだと思ったわ」 「まあ、飛鳥やリンはお前を歓迎している。加入は何も問題ない」 「アナタは?」 「俺は、よほどのことがない限り口出ししない」 「あ、もしかしてアナタ、傭われなの? 護衛役?」 「それと案内役」 「そうだったのね。リンは? てっきり旅慣れしてると思ってたわ」 「陸路の旅には疎いらしい」 「そういうことね。あっ、
2025年6月3日


お前の旅の目的は(1)
「お前、なんでついてきたんだ」 「なんでって、そりゃ金のためよ」 「……怪物駆除か」 「おう。──オレはバカだし、ナリもガキっぽいから、町の大人にゃナメられててよ。町じゃあ働いても、ろくに稼ぎを貰えねェ。そんなオレに、バカでもガキでも金を稼げる、実力主義の世界を教えてくれたのはお前だろ」 「……それで?」 「バカでも、っつったって、ド素人がひとりでやるには取っかかりがねェのよ。戦い方に、クエストの貰い方、道具は何が要るのかとか」 「あー、案内所はわかるか? 青い看板の。あそこに行けば初心者向けの案件を紹介してもらえるぞ」 「わかるわかる。でも初心者向けっつーことは、報酬も大したことねーんだろ?」 「まぁ、緊急性が低くて、技術のない人間がひとりで請けられるような案件となるとな。それだったら、頭数の要る案件を中級者に交じってこなしていく方が、得られるものは多いだろう」 「だろ? ほら合ってんじゃねーか」 「……『お前が言い出したんだから、お前が面倒見ろ』と?」 「『目で見て盗むくらいはさせろ』と」 「……長期的なこと考えるなら、他の奴探した方がいいぞ
2025年6月3日


かたちの違う 誠実な人
『好きだよ』と、そいつは軽々しく口にする。 曲がりなりにも異性で、俺には散々『お前が嫌いだ』と言われていて、周りには自分を好いている人間が何人もいるにも関わらず。 「なんで、よりによって俺に言う」 「というと?」 「誰とは言わないが、もっと言うべき相手ってのがいるべや」 「むしろ相手は選んでいるぞ?」 「はあ?」 いつもと変わらず涼しい顔で、 「夕葉だから言っているんだ」 嫌味なく真っすぐ俺の目を見つめて、そんなことを言い放つ。 「そ〜〜いう台詞を『他人を口説きながらじゃねえと喋れねえのか』 と言ってんのよ俺は」 「口説いてはいないよ」 「じゃあ何よ」 「言いやすいんだよね。私のこと嫌いだから」 「はあ?」 本日二度目の『はあ?』が出た。こいつと話すと何回言っても言い足りない。 「私のこと嫌いっていうのはさ、ちょっとやそっとじゃ揺るがないでしょ」 「そりゃあな」 「飛鳥には前にちょっと話したんだけど、私かっこつけでさ。それってつまり相手の心証を気にする方なんだけど」 「おう」 「私のことがずっと嫌いなら、多少のことで私の印象は変わらない
2025年4月20日
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