スタート地点に降り立つとき、いつも、街は夜の始まりの色で染められている。
海風の香り。酔ったように浮つく身体。星のように瞬く街灯りの下にいた、これまた星のような金色の瞳をした人と目が合った。その人に駆け寄ろうとしてあたしは、
*
夢を見ていると、たまに展開が飛んで全然脈絡のない場面転換が行われることがある。
意識がぼんやりとしていて現実味がない。星も街灯も視界にはなく、波の音は壁を挟んで遠く聴こえる。ここは屋内で、あたしはベッドに寝かされていることがわかった。
視線をずらすとベッドのすぐ横で誰かが本を読んでいた。
本を支える指が長い。さらさらストレートの髪の隙間から、虎のような金色の瞳が見える。
金色の目はあたしの視線に気が付くと髪を耳にかけてこちらを覗き込んできた。
「目が覚めた?」
低い声だった。優しくて懐かしくなる暖かい声。そんな声が返事を待たずに予想外のことを訊いてきた。
「君、日本人?」
「えっ」
改めて正面から向こうの顔を見る。日本人か、なんて訊かれるということは相手は日本人以外なのかと思ったが……整った顔立ちからは外人っぽさとか日本人っぽさというのは正直よくわからない。
染めているようには見えない髪は深い赤色。漫画やゲームのキャラクターがそのまま人間になっているようだった。
「なんとなく、こっちの人と違う感じがして」
「えと、う、うん、そうだけど……あなたは、何人?」
「私はね——」
なんて言うんだっけ、と一瞬考え込んで、国籍不明の美人はこう言った。
「 『異世界人』って言うのかな?」
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