時を同じくして俺は、妙な男の手によって、俗に言う『異世界』なる場所に拉致誘拐されていた。
誓って言うが、俺はトラックに轢かれるような場所にはいなかった。転生するようなフラグは何一つ立てていない。俺は先日夢見が丘中学校を卒業し、高校に入学するまでの春休みを謳歌すべくポテチを食いながら漫画を読んでいるところだったのだ。
「実は夢の中なんだよね」
それを崩したのはこの男。こっちの反応をさして伺いもせず独り言のようにしゃべり続けるこの男の台詞から俺は今後のなりふりを決めねばならない。
「夢って眠って見るあの夢? ここが?」
「そう、その夢」
「じゃあなんだ、俺は漫画読んだまま寝落ちしてこんな謎な夢を見てるって言うのか?」
「いや、僕はちょっとした裏口を使えるんだ。とある少女の夢の中、そこに君を招待している形さ」
「ほー、してその寝ぼすけはどこのどちらさんで?」
「天峰飛鳥。君のクラスメイトだよ」
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