「天峰ってあの天峰? 元同じクラスでギャルでもオタクでもなく特筆することの特にないどこにでもいるようなあの天峰?」
「うん、その天峰飛鳥ちゃん」
「それは……何? この謎空間でお早い同窓会でも開くわけ?」
「いや? 呼んだのは君ひとり」
「何故に」
「仲良いでしょ?」
「いや全然。グループワークでもない限り全く喋らん」
「あれ? 思い違いだったかな。まぁいいや」
まぁいいやとはなんだまぁいいやとは。こちとら異世界トリップしとんのだぞ。
「で? 夢にしちゃ会話はまぁちゃんとしてるし、つねってもいたいわけだが、本当にここって夢の中なん? それも他人の」
「君たちが常識としている『夢』とは定義が違うかもね。でも基本的にこの世界は君たちが眠りについたときにだけ接続できる。そこは近いだろう?」
「接続?」
「うーん、正直これは僕の推測でしかないんだけどいいかな。
——ここは広大な夢世界の、ほんの一区画。
本来とても広いこの空間を無数に区切って、その小部屋(セル)のひとつひとつを君たち現実人に貸しているのさ。いま僕たちがいるここは、飛鳥ちゃんが管理している、飛鳥ちゃんのための箱庭なんだ」
「そんなクラウドサービスみたいな」
「何それ?」
「ネットでも似たよーな仕組みがあんの」
「へえ、じゃあ僕の推測はある程度理に適っているのかもしれないね」
「んで、世界の仕組みを夢想している、あんたは誰さん?」
「僕? 僕はシュロ・マリアン。この世界を滅ぼしたい魔王さ」
コメント