ナバト 有羽-3
- 7月1日
- 読了時間: 3分
「そう言やあんたさぁ」
「なに?」
「最初から『悪役』としてデザインされたん?」
「違うよ? 嫌われちゃったからラスボスのポジションに据えられたの」
「前から気になってたけど何をやってそんなに嫌われたんだよ」
「うーん、何だろ」
「覚えがないのかよ」
「反応の変わったタイミングを考えるとあれかなあ、飛鳥ちゃんのお人形を貶しちゃったから」
「お、お人形?」
「言ったでしょ、飛鳥ちゃんお手製の子たちさ」
「ああ、オリキャラの方々」
「そうそう。見る?」
そういえば散々天峰の名を出していたのに肝心の天峰について全然聞いていなかった気がする。
それにしても『お人形』か。さっきおねえさんについて話したときも近いことを言っていた。こいつにとって異世界人、天峰と自分以外の人間は、キャラ設定という名のプログラムに沿って動くロボットのように見えているのだろう。
俺がひと思案している間に奴はなにやらガラクタで埋もれた机の上を漁っていて、やがて若干書類の雪崩を発生させながら占い師の水晶玉のようなものを取り出した。
「なんだそれ」
「よくあるでしょこういうの。今でない時間や、この場でない場所を遠隔で覗けるアイテム。……宙に浮く画面とかの方が今っぽいかな?」
「いやどっちでもいいけど」
水晶玉に映し出されているのは森の中。霧雨で遠くの方はふんわりと霞んで見える。夢の中らしいデタラメな形状の木々も相まって、水彩で描かれた絵本のような景色だ。
卒業式以来、数日ぶりに見た天峰は、別段普段と変わらない様子だった。上着の裾から覗くスカートや装飾を見るに多少ファンタジーらしい華やかな服は着ているのだろうが、そのくらいだ。
「それでこちらが飛鳥ちゃんのお仲間ですね」
「ほう」
奴の声に呼応するようにカメラが移動する。
なるほど、現実の中学高校にはまずいない系統のイケメンだ。くっきりとした目鼻立ち。ひとつ結びにした長い髪。長身でスタイリッシュ、それでいて大人の女性のような優美さもある。そんな青年は天峰と相合傘しながら人気(ひとけ)のない森の中を進んでいる。音声はないがイチャついているのは察せられる。天峰の理想や願望を叶える世界だとは聞いていたが、まあ俺たち年頃の少年少女の願望なんてものは得てしてそんなものだろう。
「まだ一人目しかいないみたいだけど、この感じなら二人目も今日明日中にはエンカウントするんじゃない?」
「なんでわかんの?」
「今までそうだったから」
「今まで?」
「いわゆるループものさ。飛鳥ちゃんは自分の考えたストーリーを、時々改変・改良を加えながら、シミュレートしてはリセットし、冒頭からやり直している。繰り返すうちにキャラクターの登場順やタイミングはある程度固定されてきたんだ」
「俺、ゲームの周回あんま好きじゃないんだよな。よく飽きねえこった」
「完全に一緒ではないからね。さっきもちょっと話したけど、飛鳥ちゃんが特に決めてない箇所に関しては結構ランダムだから」
「ふーん、んで次出てくんのはどんな人?」
「前回と同じ順番なら武闘派の青年だよ」
「またイケメンか。――その割に、天峰がすげえ難しい顔してんのは何?」
「ああ、それはね――」
「どうも次に登場する彼、前回の試行で異常行動を起こしたみたいだね」



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