ナバト 有羽-4
- 7月1日
- 読了時間: 3分
「ときに漫画やゲームに詳しいアルちゃん」
「は?」
前回のいかにも不穏な引きの台詞の後、奴はしばし余韻の静寂をつくり、また例によって唐突に次の話題へと移った。
「いわゆるタイムリープと呼ばれるジャンルに於いてリセット、すなわち物語の起点に戻るという現象はどのように引き起こされているかな?」
「待て待て、いい加減話が飛びすぎだ」
「そう? 流れはちゃんと存在したと思うけど」
「いや次に出てくる男キャラがどうのって話だったじゃん」
「うん、彼が前回の試行で何をしたのかって話だったよね。だからアルちゃんにはその前に、前提の説明が必要でしょ?」
いつの間に俺はアルちゃんなどと呼ばれる間柄になったのだろう。どうもこの男はこれまでの生涯でまともに友達がいなかったらしいということは、ここまでの見事な『喋るコミュ障』っぷりで察しがついてきたが。
「……タイムリープの、なんだっけ?」
「ループの方法だよ。フリダシに戻るという現象が起こっているわけでしょう? 君の知っている漫画やゲームではそれをどのようにして引き起こしている?」
どうもこいつの周りにいる夢世界の住民たちはもちろん、天峰自身もそこまでアニメやゲームに明るい方ではないらしく、その手の創作物の『お約束』を心得ている人間はこのシュロ・マリアンという男にとって稀有な人材らしかった。
別に俺も流行りものに広く浅く手を出している程度であって、オタクでもなんでもないのだが。
「……それ用の魔法やアイテムを使うとか? もしくはなんか条件が設定されててそれを満たすと自動的に巻き戻るパターンとか」
「ふむ、条件というのは?」
「あーっと、例えば毎晩零時になるとその日の朝まで巻き戻って同じ一日が繰り返されるとか、特定のキャラが死ぬとゲームオーバーになって最初の日に戻るとか」
「なるほど。要するに誰かが自発的にリセットを行っているか、リセットを引き起こすシステムが存在していて登場人物が巻き込まれているか、といったパターンがあると。それでいうと飛鳥ちゃんはどちらにも当てはまるかな」
「両方? 自発か他発かって話だったのに?」
「一応この箱庭に於けるリセット方法は後者のような『リセットの条件を満たす、あるいは続行の条件を満たせなくする』に該当する。じゃあ条件って何?」
「……?」
「視点を変えよう。飛鳥ちゃんはどうして『夢世界のリセットの方法』を知っていると思う?」
「へ? それは、チュートリアルとかあるんじゃねーの?」
「ないよそんなの。基本的に現実人の自由な感性と創造性に委ねられてるの。そこに人がいれば話しかけるし、壺があれば覗くか割るでしょ」
「わからなくもないけども……」
「じゃあそんな何も説明のない中、メタな機能にアクセスしたいときは? セーブしたいときやアイテム欄を見たいとき、でもやり方がわからないときは?」
「……ボタン当てずっぽうに全部押す?」
「運が悪かったのはここが夢世界だったことだよね。現実人の飛鳥ちゃんが、飛鳥ちゃんのための夢世界で、強制終了を願い、ニューゲームを願った。だから夢世界はその機能を用意した。あの子はリセットの方法に『気付いた』んじゃなくて、『自分で定義してしまった』んだ」



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