top of page


来し方のヘアピン
「あいつ、何処行ったんだ……」 旅の仲間も増え、街での買い出しは二組に分かれて行動することが多くなった。それで今日は俺とミカの二人で南東エリアの店を回ることになっていた。 周辺で最も栄えているこの街は、旅人も街に住む人間も数が多い。特にこの辺りの様々な店が立ち並ぶ通りは人の少ない時間がない。賑わう雑踏の中、あいつは自分が他の人間より背が低いことも忘れて人の波に入り込み、そのまま姿を消してしまったのだった。 買うものや立ち寄る店の名前はリストにしてあるが、これはほとんどが共用の消耗品に関するものだ。いなくなる直前に『春用の上着が欲しい』と言っていたあいつが、リストにない服屋なんかに入り込んでいたりすると流石に捜しようがない。道中でリストにある店を確認しつつ、飛鳥たちとの合流場所のある方角へ向かっていくしかないだろうか。 「ねぇ、そこのおにいさん」 ふいに後ろから少女の声がする。知らない相手に話しかけるような口ぶりにかすかに疑問を感じながらも声の方へと振り返る。 「アタシみたいなヒト、見てない?」 言葉通り、声の主が指差しているのは、自分だ
1月26日


彼とリラ
失礼だけど、最初彼が屋敷に来た頃、彼が少し怖かった。 女の子のようなきれいな顔立ちをしていたけれど、眼帯をしていて、顔も手も皮膚がボロボロ、それを隠すように暑い季節も全身着込んでいた。 世界には魔法障害というものがあるらしい。 魔力というものは目に見えない小さな粒として空気や動植物のからだの中を巡っていて、私たちの呼びかけで何にでも姿を変える力を持っている。水の魔法を使えば魔力の粒は結び合って疑似的な水となり、炎の魔法を使えば魔力は火薬や導火線になって発火する。姿を変えた魔力は時間が経つと分解されて、また元の何にでもなれる粒に戻る──とされている。 「彼の魔法はその『時間が経つと分解される』のプロセスに何か問題があるらしくてね」 教えてくれたのは屋敷の主だった。 「鉱石の魔法でね、鎧みたいに身体を覆って戦うのが彼のスタイルだったんだけど、それをやると皮膚から結晶が生えてるみたいになっちゃうんだ。割ったり削ったりしてオフするんだけど、除去時に表皮ごと持ってかれちゃうこともあるし、例えば手や指に細かい結晶が残った状態で顔とか触っちゃうとエッジで
2023年2月22日
bottom of page