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お前の旅の目的は(3)
「『俺の旅』じゃなくて、『芽留の旅』なんですよね」 「芽留の?」 「ええ。俺と芽留はいとこ同士なんですけど、芽留の両親がちょっと気難しい人たちで。外で遊ばせない、旅行やお出かけもしない、勉強や習い事は家庭教師、みたいな」 「それは……」 「厳しいっていうよりは、過保護なんですよ。芽留って、お世辞にも丈夫な方ではないし。怪我したり、誰かに嫌な目に遭わされたり、なんていうのがあったらコトじゃないですか。一人娘だからなおのことです。 逆に俺なんて超奔放に育ったクソガキでしたからね! 庭の木に登って・芽留が真似しようとして・怒られ、虫を大量に捕まえて持っていき・叔母さんを卒倒させ・怒られ……」 「……嫌がらせ?」 「いや、蝶とかトンボだったんですよ! きれいな奴! 実際、芽留本人は虫好きだったんで喜んでました」 「まぁ男児のプレゼントはそんなもんか……なんの話してたんだっけ」 「あっそうだ、芽留の話ですよ。虫もそうですけど野の花とか、旅行の写真とか、『外』のものを持っていくと芽留は喜びました。自分ではなかなか体験できないから。 それで、あるとき言い出
2025年6月3日


かたちの違う 誠実な人
『好きだよ』と、そいつは軽々しく口にする。 曲がりなりにも異性で、俺には散々『お前が嫌いだ』と言われていて、周りには自分を好いている人間が何人もいるにも関わらず。 「なんで、よりによって俺に言う」 「というと?」 「誰とは言わないが、もっと言うべき相手ってのがいるべや」 「むしろ相手は選んでいるぞ?」 「はあ?」 いつもと変わらず涼しい顔で、 「夕葉だから言っているんだ」 嫌味なく真っすぐ俺の目を見つめて、そんなことを言い放つ。 「そ〜〜いう台詞を『他人を口説きながらじゃねえと喋れねえのか』 と言ってんのよ俺は」 「口説いてはいないよ」 「じゃあ何よ」 「言いやすいんだよね。私のこと嫌いだから」 「はあ?」 本日二度目の『はあ?』が出た。こいつと話すと何回言っても言い足りない。 「私のこと嫌いっていうのはさ、ちょっとやそっとじゃ揺るがないでしょ」 「そりゃあな」 「飛鳥には前にちょっと話したんだけど、私かっこつけでさ。それってつまり相手の心証を気にする方なんだけど」 「おう」 「私のことがずっと嫌いなら、多少のことで私の印象は変わらない
2025年4月20日
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